自閉症スペクトラム症とは?①
発達はY軸を認識の発達、X軸を関係の発達という座標の中でとらえられます。その座標で発達のベクトルは原点Oから右上へと伸びていきます。その座標の中のどこに位置するかで発達の遅れは診断されます。自閉症スペクトラム症(ASD)はY軸には遅れはないが、X軸に遅れがあり、YとXがバランス良く伸びている定型発達の分布から、はみ出した場所に位置しています。
自閉症スペクトラム症は関係発達の遅れ
自閉症スペクトラム症(ASD)とは、認識の発達に遅れはないが、関係(社会性)の発達全般の遅れが前面に出てくるものです。つまり、対人交流の生まれ持った力不足があるということです。人間生活は、共同的に生きるように作られているため、この力不足が学校や職場という集団の中で生きづらさへとつながります。また、対人交流の力不足は、社会性の遅れだけだけでなく、言語や、同一性保持への強迫的欲求、感覚世界の混乱のしやすさなどの特徴をも引き起こします。
発達の歩みには大きな幅、個人差があります。しかし、自閉症の研究で有名なカナーの自閉症児の追跡研究が明らかにしているように、子どもには育とうという力が備わっています。発達のという座標のどこに位置するかは変わってくるのです。しかし、関係の発達に遅れがある彼らは、人や環境に自ら関わる力が弱い分、人や環境からの影響を一方的に受け取りやすくもあります。彼らの関係の発達には安心できる人と環境がまずは必要です。
・自閉症スペクトラムは固定された障害ではない。
・子どもの発達は連続的なもので、変化や改善されていく可能性を持っている。
・どこまで歩んでいけるかは、その子の知的ポテンシャルと、環境のあり方とが影響する。
では、どのように関係発達の遅れを支援すれば良いのでしょうか?
関わりの力の伸びを促し、力不足をカバーし、伸びを妨げるものを取り除いていくのが彼らへの一番の支援です。
まずは1対1の交流ができるようになることです。情動を楽しく共有できるような経験をする、経験を分かち合うことの繰り返しで関わりの力は伸びていきます。Study Lab Rootsでは、彼らの特性を理解した上で、学習という目標を通してマンツーマンの講師との授業という場で、関わりの力の育成の機会を提供しております。
治療は必要なの?病院に行った方が良い?
発達のご相談で精神科を受診するお子さまの数は増加傾向にあるように感じられます。診断できる医師、病院の新設も行われています。しかし、診断と支援は両輪である必要があります。投薬や2次障害へのカウンセリングは有効です。しかし彼らに大切なのはその後の継続する支援です。福祉サービスの利用には医師の診断が必要です。しかし、発達障害は治療されるものなのでしょうか?診断とは大人と医療が作ったラベルともいえます。それを必要としていない子どももいます。一番は子どもが自分の特性に自ら気づく機会を与え、それを受け入れて環境を調整してあげられる周りの環境を整え、子どもの頑張りを応援できる寄り添う大人たちが必要なのではと思います。
参考文献
・カナー.L 『幼児自閉症の研究』十亀史郎他訳、黎明書房、1978年
・滝川一廣『子どものための精神医学』、医学書院、2017年