PATHS(パース)って何??
PATHSとはPromoting Alternative Thinking Strategiesの略で、日本語にすると「新しい思考を選択できるように促す方法」という意味です。この理論はマーク・グリーンバーグによって提唱されました。海外では、非認知能力である社会・情動性スキルを高める方法として個人や学校単位で取り組まれているプログラムです。国内ではあまり知られていませんが、海外ではエビデンスのあるプログラムとして知られています。
PATHSプログラム
PATHSプログラムでは、感情を理解し理解し、コントロールすることが効果的な問題解決策につながるという考えもとに、各学年に応じたプログラムが用意され、1週間に2,3回、1回30分ほどの介入を行います。段階的なステップが細かく設定されていますが、大まかにいうと、①感情の同定(楽しい、嬉しい、悲しい、悔しい、不安)②感情の理解(どうしてそういう気持ちになったかの原因の理解)③感情への対処(どうしたら解決できるのか)というステップに分かれます。RootsではこのPATHSプログラムをより使いやすい形に変えて学習指導の合間に入れ込み、子どもの社会・情動性スキルの向上を目指すとともに、今困っていることにどう対処したら良いのかを一緒に考え、計画を立てて取り組むことで、不登校や日常の困り感の軽減に取り組んでおります。
不登校へのPAThsプログラムの事例
ここでは、私たちの取り組みの実例をご紹介いたします。まず、「感情の同定」に対しては、カウンセリング的な手法で、子どもの気持ちにフィットした言葉を探していきます。「学校へ行くのはなんか嫌」「どうして泣いているのか自分でもわからない」の中身を言葉にしていきます。大人でも自分の感情を理解して言葉にするのは難しいものです。それをセラピストが子どもの目線に立って、共感的に接することで「感情の同定」お手伝いをします。その中で、「感情の理解」が生まれていきます。どうしてそういう気持ちになるのかの原因がだんだんと分かってくるようになります。「そういう気持ちになるのはどういう時が多いかな?」など、ターゲットとなる気持ちが起こるパターンを把握していきます。次に、「感情への対処」に取り組みます。
一番難しい感情への対処の身につけ方への個別アプローチ
具体的なアプローチの方法
学校に行けない理由は子どもによって千差万別です。それに対して、個別に解決策を具体的に立てていくことが一番のポイントになります。大まかには①目標を決める②解決策を考える③計画を立てる④計画を試してみる⑤どうだったを話し合う⑥計画の見直しというステップで行われます。
事例1
2人1組みの放送委員会での仕事があるが、もう一人の子が休んでしまったら自分一人でできるのかが不安になり、担当の日になると学校に行くのが不安になって休んでしまう。
取り組みについて
この事例では、その不安の中身をもっと具体的に話し合いました。給食の時間に音楽を流すのが仕事だが、機械の使い方に自信がなく、音楽を流せなかった時のことを考えると不安を感じてしまうプレッシャとなって学校を休んでしまうというものでした。そこで①「目標を決める」で一人でも音楽を流せるようになることを目標としました。②解決策としては、機械の使い方を覚えるというものですが、そのための③計画を立てるで、自分が分かるマニュアルを作るための、先生への質問項目の作成から開始しました。そして、それをもとに絵や言葉を使って自分のための放送マニュアルを作成しました。次は④計画を試してみます。その結果を⑤どうであったか話し合います。今回は③のマニュアル作りを丁寧に行った効果もあり、1度の挑戦でうまくいくことができました。そして、介入前と後での不安を数字にして比較します。介入前の自信がない状態では不安は100であったに対して、マニュアルのできたやり方がわかった段階で60となり、1度のうまくできた体験により不安は20まで下がりました。これは認知行動療法でよく使われる方法ですが、目にみえるかたちでの安心と自信につながりとともに、効果の測定を共有することに良いです。
まとめ
その後、この子は登校頻度が上がりました。不安なことが起こるたびに同様の手順でひとつづつ解決していくことで、社会・情動性スキルも徐々に身についてきて現在では毎日登校できるようになりました。今回の事例はとてもうまくいった事例になるかと思います。この過程では、学校側や親御さんの協力も必須でした。そのような環境とこの子自身の成長のタイミングがうまく重なった事例です。Rootsでは、学習と並行してこのような心理学的な手法を使った取り組みで子どもたちの成長のサポートをさせていただいております。家の子の場合はどうした良い?などご興味があればお問い合わせフォームからご連絡くださいませ。