令和6年1月1日に能登半島地震が発生しました。災害によって大人も子どもも、心と身体に大きなストレスを受け、心身に様々な不調をきたします。この不調はある意味、起きたことに対する自然な反応であり、多くの場合は時間の経過とともに収まっていく傾向があります。災害を経験した多くの人が同様の反応を示します。実際に被災していなくても、映像メディアを通して、間接的に大震災を経験した状態となるお子さまもいます。ここでは、災害時に子どもによく見られる様子について臨床心理士が紹介します。被災地に限らず、お子様のいるご家庭の参考になればと願います。
子どもによく見られるストレス反応とは?
災害によって大人も子どもも、心と身体に大きなストレスを受け、心身に様々な不調をきたします。震災直後は身体の安全と安心が優先されます。その後、ストレス反応として様々な不調が起こってくる場合があります。この不調はある意味、起きたことに対する自然な反応であり、多くの場合は時間の経過とともに収まっていく傾向があります。子どもの場合は、恐怖に対処するまでに大人よりも時間がかかり、その対処の仕方も大人とは異なります。その過程の中で、身体症状や睡眠の変化、一人でいることが不安になったり、集中できなくなったり、いつもとは違う行動が見られます。
ごっこ遊び・トラウマティックプレイとは?
子どもたちの中には、災害後にその場面を再現する遊びをする場合があります。言語の未熟な子どもたちにとって「遊び・プレイ」は、大人の言語と同じであると心理学では考えます。ですので、驚いて止めることをしない方がよいです。トラウマになるようなことを経験した子どもたちのプレイセラピーではよく見られることです。トラウマティックプレイの最後では、救急車や遊びの悲惨さを助けてくれるような表現が見られることが多いです。ただ、あまりにも恐ろしいことを再現したり、結末が悲惨な場合には、やんわりとやめさせるように誘導することが必要となってきます。
震災について何度も質問をする時はどうしたらいい?
災害について子ども達が質問をしてきた時は、子どもの話していることをまずは聞きながら、彼らの安心感・安全感を取り戻すことを促します。出来事について何度も語ること、出来事を遊びで表現することを許し聞くことが大切です。しかし、恐ろ
子どもたちが出来事を理解し、納得できるまでには何度も質問することが必要であると思ってください。子どもが質問してきた場合には、落ち着いて耳を傾けてあげてください。時に子どもは大人がびっくりするようなことを聞いてくることもありますが動揺せずに聞いてあげ、わかる範囲で簡潔に答えてあげてください。情報を柔らかくするような意図された表現は避ける方が良いです。例えば、「眠ったのよ」よりも「亡くなってしまったのよ」という方が良いです。柔らかい表現は、不用意に子どもの情報の混乱を招くことがあるからです。しかし、あまりにも恐ろしい表現や、自分や他者を傷つけてしまう場合には、やんわりと止めさせるように誘導することも必要です。子どもが出来事の現実的な理解ができるように、優しく助けてあげることが大切です。
災害について話し合った後は、今・現在の安全・安心感に焦点を持ってきてあげて穏やかに終わるのが良いです。そっと手を握ったり、一緒に絵を描いたり、深呼吸するのでもよいです。胸の前で手を交差させ、自分を包み込むようにしてトントン、ヨシヨシとしてあげることも今の身体感覚に意識がむき安心できます。その時と今は違うという感覚を持たせてあげてください。
親は自分自身の反応について、周りの大人と話し合っておくと良いです。落ち着いた対応で、子どもに安心感を持ってもらうことが大切です。子どもにとっては親といつでも話ができるというが安心感に繋がる場合もあります。
災害について話し合った後は、今・現在の安全・安心感に焦点を持ってきてあげて穏やかに終わるのが良いです。そっと手を握ったり、一緒に絵を描いたり、深呼吸するのでもよいです。その時と今は違うという感覚を持たせてあげてください。子どもが過去の中に取り残されないように、今の安全な感覚を伝えてあげてください。
映像メディアの視聴を制限してください
SNSやインタネットでは、震災に関する様々な詳細な情報や、映像が流れています。これらを見続けることは、ずっとストレスにさらされているのと同じことになりますので、大人が制限してあげる必要があります。また、実際に被災していない子どもの場合でも、映像メディアを通して、間接的に大震災を経験したような状態になることがあります。被災した人と自分が同一視されて、気持ちの混乱が起きることもあります。また、子どもでも高校生くらいになると、生き残った自分というトラウマに特徴的な「生存したことへの罪悪感」が生じる場合もあります。大切なことは、今の安心・安全感と日常を保つことです。親だけでは対応が難しいと思った時には、専門機関へ早めに相談してみてください。
子どもに見られる様々なストレス反応
<メンタルや行動におこる症状について>
一人でいられない、めそめそする、退行(赤ちゃん言葉・おねしょ)、イライラして怒りやすくなることがあります。自分や家族、ペットの身の安全を過度に気にして不安になる場合もあります。一人でいられない場合はできるだけ一緒に穏やかに過ごす時間を作るようにしてあげてください。何か特別なことをするのではなく、それまでの日常に近い生活のリズムを維持してあげてください。怒りっぽくなるのも、子どもが情報の処理と理解をしている過程であり、時間を要するものだということを知っておいてください。
<身体におこる症状>
頭痛、腹痛、吐き気、下痢、便秘、胸痛、耳鳴り、めまい、倦怠感、発熱、食欲不振、体重減少などが見られます。東日本大震災の時の心の電話相談にも、身体症状についての相談が多く見られました。子どもたちが災害時の身体症状を訴えた場合には、まずは医療機関を受診して、内科的原因がないかを確認することが大切です。ストレス反応による身体症状の場合にはメンタルケアが必要となります。
<睡眠におこる症状について>
寝つきが悪くなる、一人で寝られなくなる、悪夢、夜驚症が見られることがあります。夜驚症とは、睡眠中に突然起き出し、叫び声や泣き声を上げたり、パニック状態になったりする睡眠障害の一種です。できる範囲で子どものそばにいてあげてください。落ち着いて、「大丈夫だよ」と声掛けしてください。
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